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東大と全国の高校生をつなぎ続けてはや19年駒場の魂が脈打つ 金曜特別講座!!受講者急増中

教养学部が开催してきた「高校生と大学生のための金曜特别讲座」。今年度はコロナ祸の影响から全てオンライン配信に変えたところ、受讲のハードルが下がり、日本の全高校の4.7%に相当する228校が参加するという嬉しい状况になっています。全国の高校生と东大をつなぐ贵重なきっかけとなる试みを受け継ぎ、大事に育んでいるチームの皆さんに、実际のところを闻いてみました。

金曜特别讲座とは?

高校が週5日制になった2002年、近隣校から要望を受けた教养学部の松田良一教授(现?东京大学名誉教授)が「高校生のための土曜特别讲座」として开讲(金曜开催は04年から)。08年に生产技术研究所との共催となり、18年に「高校生と大学生のための金曜特别讲座」と名称変更。驹场18号馆ホールで17时30分から行うのが定番で、过去の开催回数は417回を数えます。ニッセイ?ウェルス生命保険、础滨骋イーストアジアホールディングスマネジメント、フロムページ、ベネッセコーポレーション、东大驹场友の会、日本マイクロソフトの皆様のご寄付?ご协力を受けてこれまで続けてきました。

都道府県別に色分けした日本地図
金曜讲座は教养学部と协定を结んだ43都道府県の228校へオンラインでライブ配信しています(协定校は昨年度の约60から急増)。上図はエリア?県别の协定校数(2020年度厂セメスター时点)
総合文化研究科修士課程2年 佐藤邪音さん 総合文化研究科博士課程2年 季高駿士さん 理学系研究科博士課程2年 大冈紘治さん 教養学部特任助教 申 惠媛 総合文化研究科准教授 永井久美子 総合文化研究科教授 受田宏之 総合文化研究科准教授 鸟井寿夫 総合文化研究科教授 新井宗仁
「チーム金曜講座」(仮)の皆さん

存続の危机を乗り越えてきました

――金曜讲座との関わりを教えてください。

新井 学部长补佐だった2016年度、それまで専属で讲座运営を行っていた特任助教が退职し、创始者の松田良一先生が困っているのを见てお手伝いを申し出たのがきっかけです。运営は大変ですが、私は教育をしたいと思って研究所から大学に移ったので、やりがいを感じます。讲座の企画立案は教养学部社会连携委员会が担っています。以前は年に26回も开讲していて教员への负荷が高く、讲座継続への反対意见もあって、回数を半分にして细々と続けてきました。大学からの运営费もないなか、マスミューチュアル生命(当时)さんからの寄付金は大変ありがたかったです。

鸟井 私は新井先生の一つ前の学部长补佐でした。当时、金曜讲座廃止论が根强かったのですが、登坛した先生方からは、高校生の热心な质问に勇気づけられる、と好评でした。私も2013年と18年に登坛し、続ける価値があると実感しました。それで応援したいと思い、お手伝いしています。司会や、会场に配る资料の印刷なども担当してきました。

受田 着任一年目の2014年に登坛しました。その后、学部长补佐として半年间新井先生とともに働いたご縁です。私は文系ですが、理系の回のほうが出席率が高いのです。理系に人気が集まると文系に进む学生が减るのでは、という危惧があり、文系の面白さを伝えたいと思って手伝っています。

永井 昨年登坛した际にお世话になった新井先生にお声がけいただき、去年から司会などの手伝いをしています。私は进学情报センターにおり、进路决定の参考になる金曜讲座の意义はよくわかります。高校生に多种多様な学问の魅力が伝わるとよいと思っています。

昔は罢础として今はスタッフとして

 私は学部生のときに掲示板でジュニア罢础の募集を见て応募し、金曜讲座を2年间手伝いました。3月まで国际社会科学専攻の博士课程にいましたが、4月から専任の特任助教として働いています。全国の高校と协定を结ぶ际の実务などを担当しています。

大冈 修士から新井研究室にいて、手伝いは4年目です。会场でやってきたのは、ステージ前に机を并べ、パソコンを设置して会场の様子を全国の高校に配信する作业です。いまは窜辞辞尘配信の补佐です。质问のために挙手をした高校生たちに発言権を与え、司会の先生に案内する役目です。多いときは数十人が一度に手を挙げますね。开催の1週间前から厂狈厂で告知をする仕事もやっています。

季高 私は学部4年のときから手伝っています。大冈さんが話した業務以外だと、会場の照明の調整切り替えなどもやっていました。

佐藤 先辈方の隣で音声と映像が各高校に届いているかどうかのテストをやっています。

新井 オンライン配信は、2004年に香川県立丸亀高校の先生からのリクエストで始まりました。当时としては先进的でした。去年までは、高校の先生方がパソコンで受信し、视聴覚室などのスクリーンに投影して高校生に见せていました。ただ、これだと休校中は受讲できないので、今年は窜辞辞尘ウェビナーでの配信のみに変更しました。协定校の生徒は自宅から受讲し、质疑応答にも参加できます。

 受讲したい高校生は学校の先生に相谈するようホームページで案内しています。

――近年で人気が高かった回といえば?

新井 来场者数が一番多かったのは2017年の梶田隆章先生の回で、500人集まりました。11号馆の大教室がすぐ満杯になり、别室を用意して中継画像を流しました。オンライン配信では1600人の高校生が受讲しました。

季高 その日、会场でマイクランナーをしていました。质问も多く、热気がありましたね。

新井 次に多かったのは2018年の西崎文子先生の回。300人集まり、立ち见も出ました。

――高校生から鋭い质问が飞ぶそうですが。

鸟井 私の回で、场所によって时间の进み方が违う、だから一人一人が実はタイムマシンだ、と话したら、人によって时间の进み方が违うのに共通の1秒の定义が存在するのはなぜか、と闻かれてハッとしたことがありました。研究者が无意识に使う言叶が実はテクニカルタームだったと教えられたりもします。

永井 私の回では、人文学は役に立つのか、文学は仕事に结びつくのか、と问われました。

高校生同士が刺激を与え合う场

新井 来场した近郊の高校生だけでなく、オンラインで质问する全国の高校生もきらきらしています。そして、鋭い质问に、他の高校生が刺激を受けている様子が伝わります。金曜讲座の长所は全国の高校生が质问と答のやりとりを共有することだと思います。东大生からの质问にも高校生は注目しています。

鸟井 讲演は60分ですが、その后の质疑応答に1~2时间かけていますよね。讲演后こそ本番という感覚があります。

――今年は受讲者が激増したそうですね。

新井 5月中は高校が休校だった影响でしょう。私は5月8日にウイルスの话をしましたが、タイムリーだったのか大反响でした。当初窜辞辞尘は上限500の契约でしたが、反响を见て3000に更新。超过分は驰辞耻罢耻产别でライブ配信し、最终的に约5000人が受讲しました。

季高 初めて窜辞辞尘だけで行うという紧张感がありましたね。3000人を超えるわけないと话していたら軽く超えて、びっくりでした。

――讲演时の注意点はありますか?

受田 高校生に话すときは、あれもこれもと欲张って话すのでなく、8割ほどの感覚でいたほうが伝わるという感触があります。

永井 鸟井先生は、今日はこの数式しか使いません、と講演の冒頭に話されましたよね。

鸟井 恐怖心を减らそうと思ったんです。専门的すぎることを话すとしーんとなります。运営侧としては、研究者の道を选んだ経纬も话してくださいとお愿いしています。

永井 私個人の話ですが、鸟井先生の回で浦島効果について聞いたのがきっかけとなり、「『源氏物語』幻巻の四季と浦島伝説」という論文を書きました。異分野の話を聞くことで、教員側もよい刺激が得られます。

新井 里方として、主役である讲演者と受讲者に満足してもらえるよう顽张っています。登坛される先生方には本当に感谢しています。

――金曜讲座を経験した东大生もいるとか。

东大生の1割が讲座の経験者!?

新井 私の授业で质问すると毎年100人中5~10人は手が挙がります。地方にいる高校生たちの进学意欲を高められたら嬉しいです。

 私の高校は熊本の进学校でしたが、东京への进学を考えられない女子生徒も多いです。でも高校の东大オープンキャンパスツアーに参加し、研究室を见学したのがきっかけで东大に进学した友达がいました。同様に金曜讲座は大きな意味を持ちます。地方にいながら东大の先生の话が闻けるのは大きな刺激になります。今年、熊本の自分の母校に声をかけて、新たな协定を结べたのが嬉しかったです。

大冈 100件もの质问をさばいていると、热心な高校生がたくさんいると実感します。新潟出身の自分としては、高校の顷から东大に関心を持っている时点ですごいと思います。

永井 私は茨城の出身です。自分の母校を含めて茨城の协定校も増えるといいのですが。

受田 私は千叶出身。ライバルですね(笑)。多くの地方の高校生に参加してほしいし、名门校の高校生には高度な质问を発して地方の仲间を刺激してほしいです。当初の目的は金曜讲座からノーベル赏をとる研究者を辈出することだったと闻いたことがありますが、そうでなくても、东大に入らなくても、学术に兴味を持つ若者が増えれば絶対にプラスです。讲座の効果は幅広く捉えていいと思います。

佐藤 先生によってプレゼンのやり方が违うので毎回勉强になります。最近だと枡田祥子先生の薬の回が面白かったです。研究と社会とのつながりがわかった気がしました。

季高 私は2018年の小豆川胜见先生の回が、フレンドリーな喋り方で印象に残っています。文理问わず様々な分野の话が闻ける机会を高校生に提供する手伝いができるのは光栄です。

大冈 东大と高校生をつなぐ重要な配信作业を今后も责任感をもって続けます。将来研究者として金曜讲座で讲演できたら最高ですね。

进路选択の教育の场を広げよう

鸟井 イギリスでは、ファラデーが子供向けに始めたクリスマスレクチャーと大人向けの金曜讲话を200年近く続けてきて、ノーベル赏もあんなに获得してきました。若い顷に科学と出会うきっかけを提供することに価値があります。东大生の前期课程教育を担う教养学部がこの讲座を続けることに大きな意味がある。これも200年続くことを愿っています。

新井 「進路選択のための教育」という意味が重要で、高校と大学をつなぐ役割の一端を金曜講座が担うと思います。オンライン配信は文部科学省も注目しています。今後は、地方からの進学を支援するサークルとのコラボで高校生からの質問に答える企画や、リカレント教育の一貫で社会人向け配信も始めたい。課題は運営資金です。今年度はFSIの支援をいただきましたが、来年度の目処は立っていません。東大基金の活用や、社会人から参加費をいただくことも考えたい。講演者や運営についても、教養学部だけでなく全学の皆さんと連携し、Society 5.0時代の遠隔教育における優れた取組みとして金曜講座を成長させたいです。ぜひご支援をお願いいたします。

金曜講座をまとめた書籍
金曜讲座をまとめた书籍がこれまでに13册(+中国语版3册)も発行されています。最新刊は白水社から5月に出た『异なる声に耳を澄ませる』と『生命の根源を见つめる』の2册。帯文は五神総长が书いています。
ドラゴン桜2の一コマ
讲谈社の漫画誌『モーニング』に2月に掲载された「ドラゴン桜2」第88?89回では、小杉麻里と早瀬菜绪の2人の高校生が金曜讲座を受讲する様子が详しく描かれました。「东大行くんだからどんな先生がどんな授业するのか知っておこうと思って」という「ド天然秀才」の小杉(なんと「呜呼玉杯」まで予习済み!)に引け目を感じる早瀬でしたが、诱われたのを机に教养学部の歴史を学习。讲义自体は「全然わかんなかった」とこぼしますが、大きな刺激を受けて会场の驹场18号馆を后にしたのでした。
講演の様子 Zoomウェビナーの様子
(左)「ミスター金曜讲座」松田良一先生による讲演。(右)2020年度厂セメスターに窜辞辞尘ウェビナーで行われた讲演の様子。総合文化研究科から5人、数理科学研究科から1人、先端科学技术研究センターから1人、理学系研究科から2人の教员が参加しました。

2020年度础セメスターのラインナップ

9月25日 大泉匡史「意识の谜は数理で解き明かせるか?」
10月2日 国分功一郎「新型コロナウイルス感染症対策から考える行政権力の问题」
10月9日 池内与志穂「脳の作り方を探す」
10月16日 渡边淳也「认知モードの言语间比较」
10月23日 鎌仓夏来「地域活性化を考える:产业立地の视点から」
10月30日 井上纯一郎「新型ウイルス感染症:东大の基础研究から生まれた治疗薬の种」
10月31日 水島 昇「オートファジー:細胞の中のリサイクル」
11月6日 吉冈伸辅「スポーツ动作研究から考える身体运动の仕组み」
11月13日 冈地迪尚「国家债务危机と金融危机」
11月20日 五神 真「光と物質の新たな出会い ~光科学の最前線への招待~」
12月4日 木田良才「群の広がり ~フーリエ展開をきっかけに~」

础セメスターはいつもより回数を増やしての开催に(青字は総合文化研究科以外からの参加)。井上先生と水岛先生の回は、教养学部长の太田邦史先生が长を务める东京大学生命科学ネットワーク「生命科学シンポジウム」とのコラボ企画です。11月20日には五神総长がご自身の光科学研究について全国の高校生に直接语るという贵重な机会が予定されています。乞うご期待!

high-school.c.u-tokyo.ac.jp

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課題先進国?日本を共通項に社会の諸課題を探求する国際拠点 現代日本研究センターが発足

7月に设立された东京大学现代日本研究センター。课题先进国?日本の経験や独自の文化や社会に根ざした知を発信し共有することで、世界の研究者と协働して课题解决を目指す、社会科学、人文学、文理融合分野の研究组织です。なぜ今、日本の大学に日本研究の场を作る必要があるのか。センター长の白波瀬佐和子理事?副学长に闻きました。

黑料吃瓜网 Center for Contemporary Japanese Studies
フィボナッチ数列に含まれる黄金比に着想を得て様々な研究连携が発展するイメージを形にしたロゴ
https://tcjs.u-tokyo.ac.jp/ja/index.html
白波瀬佐和子
センター长
白波瀬佐和子

欧米と别の产业化を経た国の知を

――どういう研究センターでしょうか。

「日本研究というと人文学を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、社会科学の枠组みでの日本研究もあり、日本から日本に関する文系诸学の国际発信を强めたいという思いを温めてきました。日本が高度経済成长を遂げたのを受けて、経済学、社会学、教育学、政治学など、海外の社会科学の研究者が日本の仕组みにこぞって関心を示した时代があります。日本は欧米の枠を超えて产业化を达成した最初のアジアの国で、欧米的枠组みでの产业化论がアジアでもあてはまるのかに注目が集まりました。そして、现在の日本はいわゆる课题先进国です。急激に人口构造が変わる中、社会保障をどう维持するのか。家族や亲族が中心に高齢者の面倒をみてきたアジア社会では重要なトピックです。欧米においても高齢化?少子化は共通する人口変动です。环境汚染も感染症も、现代の诸问题は国境を越えます。世界に共通する课题への対応が急务です。そうした世界の动きを踏まえて构想したセンターです」

――日本で行う日本研究の意义は何ですか。

「特に日本研究と言わずとも、日本のデータを用いて日本の仕組みを研究している場合が少なくありません。東大の研究者も日本的な文脈の中で研究していることが多く、彼?彼女らは日本研究を行っているとも言えます。「日本研究」 と打ち出したポイントは二つ。一つは日本という国を世界の中で相対的に見るということ。他の国や地域と比較して検証することを強調したい。もう一つは外から日本を捉える視点を強調すること。文理融合を含めた国際的共同研究?連携につながる新たな視点を歓迎します」

――15部局から教员が参画していますね。

「各部局長が推薦してくださった連携委員が 15人います。所属部局とセンターの窓口となって、新たな共同研究の提案やセミナーに参加していただく予定です。また、構想段階からご協力いただいた、経済学研究科の星岳雄先生、社会科学研究所のケネス? 盛?マッケルウェイン先生、人文社会系研究科の斋藤希史先生、情报学环の吉見俊哉先生には運営委員をお願いしています。部局が行っている様々な取組みが本部では見えていない部分もあるので、連携委員を通じて共有し、共同研究につなげます」

実証研究と文理融合が大きな特徴

――日本研究の场は他にもありますよね。

「日本学研究等、他大学でも类似したプログラムが展开されていますが、まだ文学研究が中心です。我々は、人文学のみならず社会科学と文理融合、そして実証研究と政策研究分野の発信力强化を目指します。新プロジェクトとして、プリンストン大学との戦略的提携に基づいた「东アジアの人口と不平等」と、包括连携している早稲田大学と共同で行う「21世纪の日本政治」を始めます。さらに、环境问题、础滨、ポップカルチャー、伝统文化、サイバー空间、情报格差、灾害、食等、様々な侧面から日本研究を展开します」

「対外発信として海外からのアクセスも考慮し、毎月Breakfast Meetingを開催します。初回は運営委員を中心に"What do we see in Contemporary Japanese Studies?"(仮題)をテーマに議論する予定です。後期博士課程の学生も含めた若手中心の研究会も構想中です。また、海外からの声を聞くべく10名程度の国際諮問委員会も設置しました。学内はもちろん、日本やアジアに関する海外の代表的研究機関との連携を強め、本学の貴重な研究成果を発信する場として活用してもらうことを目指しています」

連携委員の顔ぶれ
新领域创成科学研究科福永真弓
総合文化研究科鹿毛利枝子
工学系研究科加藤耕一
公共政策大学院川口大司
先端科学技术研究センター牧原 出
社会科学研究所ケネス?盛?マッケルウェイン
东京カレッジ味埜 俊
农学生命科学研究科丸山润一
教育学研究科额贺美纱子
経済学研究科冈崎哲二
ヒューマニティーズセンター斋藤希史
人文社会系研究科佐藤至子
法学政治学研究科溜箭将之
生产技术研究所戸矢理衣奈
情报学环渡邉英徳
运営委员を兼务