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平成23年度入学式(学部)総长式辞

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式辞?告辞集  平成23年度入学式(学部)総长式辞

平成23年(2011年)4月12日
東京大学総長  濱田 純一

 この春、东京大学に入学なさった皆さん、おめでとうございます。また、これまで皆さんの大変な受験勉强を支えてこられたご家族の皆さまにも、心からお祝いを申し上げます。
 今年の学部入学者は、叁一五五名です。その内訳は、文系の新入生が一叁〇四名、理系の新入生が一八五一名となります。またこのうち外国人留学生は、叁九名です。これから皆さんがその一员となる东京大学は、知的な刺激と知的なチャンスに満ち溢れています。皆さんが、国民から东京大学に与えられている、この素晴らしい环境を存分に活用し、国民に対して、そして世界の人々に対して、知的な责任を全うできる人间として成长なさることを愿っています。

 本年度の入学式は、例年とは大きく异なり、武道馆での开催ではなく、この小柴ホールで代表の皆さんだけに集まってもらう、小规模な式典としました。これは言うまでもなく、东日本大震灾とその后の状况を考虑したものです。今年は入学式を中止する大学も少なくなく、东京大学もさまざまな可能性を検讨してきましたが、最终的に、このような形で実施することとしました。
 このように小规模でも入学式を行うことにした理由としては、これまでの厳しい受験生活を终えて大学生活を始めようとする、人生の大きな転换点というタイミングで、皆さんが気持ちを新たにスタートできるきっかけとなる场が必要だろう、という思いがもちろんありました。しかし、それ以上に、このたびのすさまじい大震灾の惨祸を、皆さんの生涯にわたる知的な生活の原点にあるものとして心に刻み込む机会、そして、膨大な人々の悲しみや痛み、苦しみを正面から见つめ、その惨祸と皆さんがこれから学ぼうとしている知识とのかかわりを、真剣に考えてもらう重要な机会という観点から、むしろ积极的にこうした场を设けるべきだと考えました。

 东日本大震灾による人的被害は、昨日の段阶で、死者が一叁一叁〇人、行方不明者が一叁七一八人という数に上っています。想像を絶する数字です。ただ、数字というものは全体の规模感を直観的に理解するには有用ですが、往々にして、现実の被害の生々しさを抽象化してしまうきらいがあります。一叁一叁〇人、一叁七一八人という数字をみる时に、この大きな数字を构成している一人ひとりの方々が、ついこの间まで皆さんと同じように生活を送り、喜び悲しみ、生きていらしたことを想像してもらいたいと思います。それが一瞬にして失われたことの重さを、深く受け止めて下さい。また、幸いに命をながらえた方々も、治疗を受けたり不自由な避难生活を送ったり、生活再建の厳しい现実に直面しています。皆さんがこれから知识というものにかかわっていくときに、そうした「现场への想像力」をつねに持ち続けてもらいたいと思います。
 たしかに、被灾された方々や被灾地という现场への想像力をたくましくすればするほど、皆さんは、その重さに打ちひしがれ、茫然自失に陥るかもしれません。しかし、だからといって、现场への强い思いから逃げるのではなく、その重みに耐えて前に进んでいくのが、知识というものにかかわる私たちの使命です。今日、大震灾による被害がまだ続いている、决して终わっていない中で入学式を迎える皆さんには、この地震によって起こった事実を、たんなる数字や纸の上の知识、抽象化された知识としてではなく、生きた体験として自らの心に刻み込んでもらいたいと思います。それによってこそ、皆さんがこれまで学んできた知识、そしてこれから学ぶ知识を、本当に人々に幸せをもたらす力として成熟させていくことが出来るはずです。

 ほとんどの皆さんにとって知识というのは、受験勉强の中で抽象的なものであったと思います。それはそれでよいのです。知识というものは抽象化されることによって、多くの人々に时代を越えて伝えられていきます。また、直接的な経験とは切り离された知识を、集中的に蓄积していく时期というのも、人生の中で间违いなく必要です。大学でのこれからの勉强もまだ、すぐには现场とのかかわりを意识することは难しいかもしれません。しかし、そうして学んだ知识が现场と强いかかわりを持つことを、これからの人生の中で皆さんは、いずれ気付いていくだろうと思います。
 私自身の学生时代の経験を振り返ってみると、知识が社会の现场で具体的に意味をもつことを感じたのは、公害问题とかかわった时でした。「公害関係の立法过程」というテーマのゼミに参加していた时のことですが、法律の制定过程に影响を与えるさまざまなステイクホルダーについて、ゼミ生がそれぞれ分担して东京大学新闻に记事を书くことになりました。私は労働団体を担当しましたが、その折に熊本県の水俣に行って、原因公司の労働组合の人たちへのヒアリングを行ったことがありました。これは、私が最初に自分の勉强の成果を公表したという意味で、思い出深い机会なのですが、それ以上に、自分が学んでいる知识が社会的?现実的なものであることを、はじめてはっきりと意识した机会でした。皆さんにも在学中に、どういう形であれ、自分の知识が现场とかかわる経験をしてもらえると、素晴らしいと思います。

 それでは、私たちは、このたびの东日本大震灾がもたらした事态に対して、どのようにかかわることができるのでしょうか。皆さん、そして皆さんのまわりの人たち、そしてすべての国民が、また世界の多くの人々が、自分がこの惨祸に対して何を出来るのだろうかと、自ら问うてみたことと思います。私も、个人として、また东京大学として、何が出来るのか、ずいぶん悩みましたし、今も考え続けています。人々が、肉亲を失った悲しみと、あるいは生活基盘を破壊された苦しみと格闘している时に、大学の拠って立つ知识というものが何を出来るのか、无力感を感じることもあります。また、知识よりも、食料、水、毛布、あるいはガソリン?灯油といった援助物资の方が、はるかに目前の役には立つように感じます。
 そうした中にあって、东京大学でも、ボランティアとして活动しはじめている皆さんがいることを、心强く感じます。もちろん、ボランティアの活动では、必ずしも自分たちのこれまでの知识が役立つわけではありません。子どもたちへの教育や医疗支援、あるいは法律相谈など、自分の知识がすぐに役立つこともあれば、家の中に流れ込んだ汚泥の除去や瓦砾の片づけ、あるいは介护や物资の积み下ろしなどの作业に直面して、とまどうことが多いかもしれません。しかし、そうした作业こそ、今を必死で生きている人々が切実に求めているものであるのを知ることは、皆さんがこれから、知识のあり方、社会が必要としている知识の多様さを考えていくために、得难い経験となるはずです。
 自分たちの専门知识を生かして活动しようと动き出している教员たちもいます。附属病院の医疗チームはいち早く现地入りしましたが、いま、地域での高齢者も含めた生活再建や町づくりへの协力、あるいは、渔业?农业の復兴支援など、被灾地の復兴に向けた活动も始まろうとしています。私もつい先日、たまたま宫城県冲で大きな余震のあった日ですが、救援物资の搬送と、东京大学としての今后の復兴支援について打合せるために、岩手県の大槌町へ行ってきました。大槌町は、ご存知のように大津波で町が壊灭状态に陥ったところですが、ここには东京大学の大気海洋研究所の研究センターがあり、长い间、地元の人たちとの亲密な交流が続いてきたところです。また、これまで东京大学の研究者が地域の人たちと心の交流を重ねてきた釜石市、そして远野市も访ねてきました。远野市はやや内陆部で比较的には被害が少なかったところですが、大槌や釜石など沿岸部の被灾地への后方支援基地として、市全体が救援活动に全力を挙げておられます。その热い思いとご奋闘には、头が下がりました。

 こうした活动を绍介すると同时に皆さんに申し上げておきたいのは、このように、被灾地の现场で実际に行动することは大切ですが、被灾地に行かなければ何の役にも立てないのだと考えるのは、间违っているということです。被灾地の状况は、いまメディアを通じていろいろな形で伝わっており、すさまじい被害の光景はもちろん、被害の苦しみ、悲しみ、その中での人々の勇気、思いやり、きずな、さらにこれから復兴に向けて求められている事柄など、皆さんは十分に理解しているものと思います。そうした现场からの情报を自分自身の中で彻底的に消化し、吸収し、そのようにして、いわば「身体化された现场」との紧张感を、皆さんがこれから知识を学ぶ时に、またそれを社会で生かしていく时に、絶えず持ち続けることも、このたびの惨祸に対する行动として同じく重要なものです。
 この东日本大震灾がもたらした惨祸からの復兴には、これから长い年月がかかるだろうと思います。そして、それは、日本社会全体の活力の復活の动きとも重なっていく、非常に大规模なものとなるでしょう。いま入学したばかりの皆さんも、大学を卒业してからも长く、直接的にしろ间接的にしろ、この復兴のプロセスにかかわっていくことになるはずです。また、ぜひともかかわっていただきたいと思いますが、そうした见通しを持てば、今あせることはありません。

 すぐにボランティアなどの行动に出るのもいいでしょう。そのための枠组みを东京大学も準备しつつあります。昨日、大学として救援?復兴支援室をスタートさせましたので、これからの现地への継続的な支援の窓口になると考えています。しかし、この大学という场にあって、じっくりと自らの知的な力を磨き続けることも大切です。现场への想像力、现场との紧张感さえ忘れなければ、皆さんは被灾地の復兴に、そしてこの国の未来に、さらには世界の人々のために、间违いなく大きな贡献が出来るはずです。
 皆さんのこれからのご健闘を祈って、式辞といたします。


 

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